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本編後のルルーシュ
以前書いて載せていたものを、やっともってきました。
ルルーシュにも救いを、と思って書いたものです。
相変わらずのショートショート。
※かなりネタバレしています。
R2本編を見てからお読みくださいませ!
◇
何もかも奪った。
大切なもの、すべて――。
でも謝らない。
絶対に。
ゆ る さ な い で 、
わ た し を ば っ し て
「――ああ」
空が蒼い。
ここはどこだろうか。
知らない、けれど美しい場所にルルーシュは横たわっていた。
「そうか」
全部終わったのだ。
ここは、Cの世界だろうか。
そんなことを考えながら胸元にそっと触れると、剣によって貫かれた傷はすでになかった。
「消えてしまったか……」
最期に与えられた、それ。
あの痛みさえあれば、彼を待つ間すべてを忘れずにすむと思ったのに――。
しかしあいつは生来丈夫だったから、きっと長生きだろう。
「長い、な」
溜息をつき、目を閉じる。
どうやって待とうか。
生きている頃は、どれほど時間があっても足りないと思っていた。
今は、こんなにたっぷりと時間がある。
そう、持余すほどに――。
目を閉じて草むらに横たわると、自然と眠気がやってくる。
それに任せて、ルルーシュはうとうとと居眠りをした。
「……すべて、終わったのですか」
どれほど経っただろうか。
ふと降ってきた声に、ルルーシュははっと目を開ける。
視界を支配していたのは美しい薄紅と、人懐っこい、薄紫の瞳――覚えている、いや、忘れられるはすがない女性が横たわるルルーシュを覗き込んでいる。生前と同じふんわりとしたドレスに身を包み、花のような笑顔で彼女は微笑んでいる。
「――いや、まだだ」
一度は、殺してやろうと思った。
そのために銃を携えて、行政特区のイベント会場へ足を運んだ。
それは、紛れもない事実だ。
しかし、彼女の決意とやさしさがすべてを覆した。
幼い頃から持っていたそれを強く成長させて、彼女はゼロに成り果てたルルーシュに微笑んだのだ。持っているすべてを捨てても、日本人を助けたい。なんでもない風にそう言って微笑んだ彼女は、どうしようもなくうつくしかった。
――なぜ、殺した?
悲痛な叫びが、胸をよぎる。
今更、言い訳をするつもりは毛頭なかったが――。
「すべては、始まったばかりだよ」
「では、なぜここへ?」
「俺はもう必要ないからな」
悪逆皇帝はゼロによって滅せられ、世界は平和へと歩み始めた。
すべて、計算どおりだ。
あの世界にはナナリー、それにスザクが残っている。
もう何も心配はない。
しばらくすると、ユーフェミアは体制を変え、ルルーシュの隣へ腰掛けた。
「ナナリーは、たくさん泣いたでしょうね」
「……さあ、どうかな」
はぐらかしはしたものの、本当はわかっていた。
あの妹はすべてを悟ったらしい。
――お兄様、愛しています!
確かに届いた、悲鳴にも似たナナリーの声。
――俺もだよ。
そう応えてやりかったが、そんな力はすでに残っていなかった。
それでも霞む意識のすみで聞こえた声と、汚れきった自分の手を握った、あたたかくて小さな手を覚えている。零れ落ちてきたあたたかな水滴、あれは涙だったかもしれない。
あの一瞬だけで、どれほど救われたかわからない。
涙に濡れた愛らしい頬を拭ってやることは、できなかったけれど。
小さくて愛らしい、何よりも大切だった、たったひとりの妹――。
「それに、スザクがついてる」
「……そう」
「また置き去りにしてしまったよ」
冗談で言うと、ユーフェミアは少し微笑んで首を傾げた。
「ひどい人ですね。あれほど死にたがっていた人に、また生きろと命じたのですか」
一度目は、処刑を妨害した。
二度目は、生きろというギアスをかけた。
そして三度目は――。
「新しい世界にはあいつが必要だった。ナナリーにも」
だから、死なせるわけにはいかなかった。
贖罪という名の口実で彼を縛りつけ、置き去りにした。
彼が持つ、ひたむきな正義と、まっすぐなやさしさ――これから創られるであろう、やさしい世界にふさわしい。
生かすべきだと、思った。
壊すのが自分なら、創ってゆくのは彼だ。
そうあって欲しいと思い、それを通した。
勝手な言い分だとわかっている。
彼らは自分によって引き裂かれ、離れたというのに――。
しかし、返って来たのは意外な言葉だった。
「ありがとう、ルルーシュ」
はっと目を開けると、ユーフェミアはやわらかく微笑んでいた。
姉のコーネリアとは対照的な、陽だまりのような、あたたかい笑顔だった。
すべてを赦すことができる、慈愛の具現のようなそれ――。
亡くなる直前に敵であった自分にさえ向けられた、彼女の象徴。
虐殺皇女の名など、この人についてはいけなかったのに。
どんな非道をしてみたところで、彼女につけられた泥のすべては拭うことはできまい。
優しくて大切な、もうひとりの妹だった――。
何も言えないルルーシュに、ユーフェミアはさらに続けた。
「やさしい世界を、創ってくれて」
ああ、参った。
ルルーシュは片手で顔を覆い、溜息と共に笑みを漏らした。
まったく、彼女にはまるで敵わない。
自分は何もかも奪った。
願いも、名声も、そして命さえも――けれど、謝罪はしない。そんなこと、今更して何になるというのだろう。何を言ったって、言い訳にしかならない。
自分にはもう、赦される権利などないのだから。
だけど――。
「おつかれさまでした」
花のような笑顔で、彼女は言う。
だからせめて、一言だけ伝えよう。
「――ありがとう、ユフィ」
◇