忍者ブログ
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
最新CM
[03/15 団]
プロフィール
HN:
野卯ミカ
性別:
女性
職業:
学生
趣味:
読書♪創作
自己紹介:
読むのも書くのも好きです。
【敬愛】敬称略
活字>>あさのあつこ/有川浩/京極夏彦/島本理生/西尾維新/よしもとばなな/他
漫画>>羽海野チカ/高尾滋/日高万里/他
バーコード
ブログ内検索
ブクログ
P R
アクセス解析
カウンター
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

田沼×夏目

ああ、どっちもじれったい!
すみません。
書いてる側も思います、が。

それが田夏だと思うのですw


 ◇

 越えられない。
 越えたくない。
 越えては、いけない。

 

 


 
 

ゆ め み が ち ジ ェ ラ シ ー (上)

 

 

 

「ん、ぅ」
 どうして、こんなことになってしまったのか――。
 細い手首を掴み、小さな舌を追いたてながら胸のうちで毒づく。
 固く閉じられた目じりには涙が溜まっていて、白い頬が赤く上気している。
「は……っ、やめ」
 掴む手首と、支えている腰から、確かな震えが伝わってきた。
 恐怖、もしく嫌悪からだろうか。
 どっちにしろ、こんなことは早くやめなくてはいけない。
 謝って、それから――?
 どう言い訳するつもりなのだ。
 こんなことまで、しているのに――。
 もう、戻れない。
 差し迫る現実に追い立てられるように、再び唇を貪った。
「あ、っは……」
 隙をついて喘ぐように呼吸するたび漏れる声が、ひどく扇情的だった。それに急き立てられるように、腰を支えていた手が自然と滑りシャツに潜り込む。
 熱い、な。
 普段はひんやりと冷えている肌が、今はなんだかひどく熱っぽい。
 痩せた背中に浮いた背骨を辿ると、彼の身体がまた震えた。
「なつめ」
 名前を呼び、いつもよりずっと熱い頬に触れる。
 熱に浮かされたように潤んだ瞳が、焦点も合わぬまま、こちらを向いた。
 そして、
「た、ぬま」
 うわごとのように呼ばれた。
 制止するべく発せられたそれも、今は煽情効果にしかならない。
「……っ……」
 はじまりは、数時間前――登校中の出来事にさかのぼる。

 

「おはよ!」
 朝のこと。
 明るい声に振り向けば、多軌が笑顔で手を振っていた。
「ああ多軌、おはよう」
 隣を歩く夏目の表情がやわらかくほどけ、田沼はおや、と眉を上げる。
 もともと人当たりの良い夏目だが、こんなくだけた表情を見せることは珍しい。
 ――ずいぶんと仲が良いんだな。
 田沼がそんなことを思っていると、
「ね、夏目くんちょっと」
 多軌が夏目の腕を取り、軽く引いた。
 何か囁き合っているのだが、声が小さくてよく聞き取れなかった。
 意味深に多軌が微笑み、夏目はぱっと目を瞬かせた。
「多軌、それって」
「うん、あのね」
 さらに多軌は夏目に寄り、耳元へ手を添えて何か囁いた。
 夏目の頬が、心なしか赤くなる。
 じわりとわいた感情に、田沼は小さく息をつく。
 そのとき計ったように教室の前に辿りついた。
「じゃあ夏目、またな」
「ああ、また」
 最近、夏目と多軌は仲が良い。
 以前はまったく接点がなかったのだが、アヤカシがらみの一件で接点を持ったらしい。田沼も夏目を通じて知り合ったのだが、多軌は可愛い上に天真爛漫で、とても感じが良い少女だった。
 ――あいつら、お似合いだよな。
 多軌と夏目が楽しげに話している様子を見て、いつか西村も言っていた。
 そうだよな、夏目も男なんだ。
 そんなことを思い、田沼はまた深く溜息をついた。
 自分の気持ちを自覚してずいぶん時間が経ったが、田沼はまだ何も伝えられずにいる。そして、これから先も伝えるつもりはなかった。
 今の関係を壊したくない。
 一緒にいられるならば、いっそこのまま――。
 そう決めたはずなのに。
「きついな……」
 呟きはざわめきにまぎれ、溜息と共に消えた。

 

「……多軌のこと、好きなのか?」
 その日の帰り道。
 何気なく、それとなく――何度も自分に言い聞かせて、夏目に尋ねた。
「は?」
 夏目はぱっと顔を上げ、驚いたように目を見開いた。
「なんで?」
 本当に不思議そうに、問う。
 胸にわくのは、わずかな苛立ち――。
「お前ら仲いいだろ。最近」
 夏目は以前からもてるし、あからさまに一方的な好意なら気にならない。そんなものは自分で、いくらでも払いのけられる。
 しかしもしも、一方的でないのならば――。
「だから、もしかして付き合ってるのかなと思って」
 問いかけながら、どんどん後悔がその体積を増す。
 こんなことを尋ねて、そうだと言われたら自分はどうするつもりなのだろうか。
 よかったな、と笑って応援するのか。
 そんなことができるのか――。
 夏目はきょとんとしてから、まさか、と笑みを漏らした。
「そんなわけないじゃないか」
 返ってきたのは否定の言葉なのに、胸のざわめきはまるで収まらない。
「……そうか」
「多軌は、友達だよ」
 その言葉だけで、納得すれば良かったのだ。
 それだけで、満足してしまえば、ずっとこのまま――。
 傍に、いられる。
 それ、なのに――。
「じゃあ、」
 他に好きな人はいるのか――溢れるように、問いが零れた。
 ああ、本当にどうかしている。
「それ、は」
 夏目の足が止まり、唇が一瞬震える。
 笑顔が、こわばったのは、きっと気のせいじゃない。
「悪い、言えない」
 答えると同時に視線を逸らし、逃げるように歩き出す。
 そのとき――、
「……っ……」
 田沼の中で、何かが切れた。

 

 つづく
 

拍手[3回]

PR
COMMENT FORM
NAME
TITLE
COLOR
MAIL
URL
PASS
COMMENT
TRACKBACK
この記事にトラックバックする:
ゆめみがちジェラシー(下) HOME カニバリズム・ロマンス