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[03/15 団]
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野卯ミカ
性別:
女性
職業:
学生
趣味:
読書♪創作
自己紹介:
読むのも書くのも好きです。
【敬愛】敬称略
活字>>あさのあつこ/有川浩/京極夏彦/島本理生/西尾維新/よしもとばなな/他
漫画>>羽海野チカ/高尾滋/日高万里/他
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恋愛長編(予定)
  『 愛犬服従歌 』 > 01 彼女こそ絶対
 
 オリジナルです。
 ラブコメになると、いい、な……(ぇ
 頑張って書いてます!
 ひとつひとつはわりと短いのでお気軽にどぞ♪
 




 飼い主の命令は、絶対である。





愛 犬 服 従 歌






01 彼女こそ絶対


「ほら、優姫」
 机に置かれた紙パックのジュースを見て、優姫(ゆうき)はぐっと眉を寄せた。
 愛らしい小さな顔がみるみるうちに凶悪な表情を作っていき、一(はじめ)は思わず苦笑する。大きな瞳がぎゅっと眇められ、口が頑固な一文字をつくるそれは幼い頃からまるで変わらない。そう思えば微笑ましいのだが、彼女は一度機嫌を損ねてしまうと長いのだ。
 大きな瞳がそんな一をちらりと映して、またすぐに紙パックへと視線を戻す。
「フルーツ牛乳」
 棒読みで読み上げられたのは、紙パックに印字された商品名であった。
「わたしが頼んだのはこれじゃないわ」
 一は肩をすくめて弁明する。
「売り切れてたんだよ。優姫、こっちも好きだろう」
「いちごみるく」
「だから売り切れて、」
「今日はいちごみるくの気分なのよ」
 頑なな口調でそう言って、優姫はぐっと一を睨み上げる。
 そんな優姫の視線を苦笑して受け流すと、一は席について弁当を開いた。
「今日は入荷してないんだってさ。さすがのおれも学校にないものまでは買ってこられないよ」
 弁当箱を開くと、今日は好物のエビフライ弁当だった。一は嬉々として箸を持ったが、優姫はフルーツ牛乳を睨みつけたまま、一向に動こうとしない。あまりにも強情なその姿に、一は小さく溜息をついた。
「おい優姫、いい加減に」
「ね、イチ?」
 一が注意する言葉を遮って、優姫はフルーツ牛乳を手に取ると一に押しつけた。
「これはイチにあげる。だから、ね」
 にっこりと、微笑んだ。
 その笑顔に、一はひく、と頬を引きつらせる。
「いちごみるく、買ってきて」
「あのな、優姫。人の話、聞いてたか?いちごみるくは今日」
「それは売店の話でしょう」
 きっぱりとそう言い放つと、優姫は財布を取り出して一に差し出した。
「コンビニにならきっとあるわよね」
「そりゃあ……いや、いやいやいや」
 一の顔が、みるみる青ざめていく。
「ちょっと待て。まさか今から行けって言うんじゃないだろうな?」
「当たり前じゃないの。イチの足なら余裕でしょう」
 笑顔と共に放たれた言葉に、一はがっくりと肩を落とした。
「……お前な、ちょっとは妥協しろ」
「あら、誰に物を言っているの?」
 一の抗議をふん、と鼻で笑うと、優姫は腕時計に視線を落とした。
 一は小さく呻いて、弁当と時計を交互に見た。昼休みは残り20分を切っている上に、机の上の弁当にはまだ少しも手をつけていない。コンビニまでは片道5分、買い物の時間を含めると15分弱は時間を取られることになるだろう。
「イチ」
 優姫の声が、悶々と考えこんでいた一を現実へと引き戻す。
 はっと顔を上げると、優姫は細い手首を持ち上げて一に時計を示し、
「設定タイムは10分」
 ――できるわね?
 ふわりと優雅に微笑んだ。
 愛らしい笑顔と共に放たれた命令を、一はぐっと唇を噛んで飲み込む。そして未練たっぷりに箸を置くと、勢い良く立ち上がった。そして、
「くそ、待ってろよ!」
 財布を掴み、鉄砲玉のような勢いで教室を飛び出した。


 さて、場所は変わって一学年下の一年生の某教室である。
 軽やかに校庭を駆け抜けていく一を見ていた女子生徒がいた。
 彼女は高めに結い上げた髪を揺らし、窓の外へ視線を落とす。最近フレームが緩みがちな赤い眼鏡を押し上げて、窓ガラスに両手をついた。
「あ、戌亥さんだ」
 ぱっと目を輝かせた彼女を見て、友人たちがくすくす笑う。
「出たよ、智子の戌亥先輩病」
「ほんと好きだねぇ」
「いいじゃないの、別に」
 唇を尖らせて反論し、再び校庭へと視線を落とす。しかしほぼ全力疾走に近い速さで駆け抜けていく彼は、あっという間に校門を抜けて行ってしまった。
「どこに行くのかな、あんなに慌てて」
「おつかいじゃないの」
 ひとりの女子生徒の言葉に、智子はぱっと振り返る。
「おつかい?」
「兄貴が言ってたもん。戌亥は麻生姫のイヌなんだって。あんただって見たことあるでしょ。戌亥さんといつも一緒にいる、あのお人形みたいな人」
 智子は記憶を辿り、頷いた。
 戌亥の傍には、いつも小柄な少女が傍にいた。白くて細くて、小さくて、本当に人形みたいにきれいな人だった。ふたりは仲が良さそうで、何より、彼女を見下ろすときの戌亥の瞳があまりにもやさしくて――てっきり付き合っているものだと思っていたのだ。
「じゃあ、付き合ってないの?」
 目を瞬かせた智子に、友人はしっかりと頷いてみせた。
「恋愛じゃなくて、主従関係らしいわ。時代錯誤もいいところよねぇ。でも本人がそう言っていたらしいし、あの学年じゃ有名らしいよ」
「主従関係?本当に?」
 目を丸くした智子を見て、友人はにっこりと笑った。
「そう。だからあんたにも、可能性はあるってこと」


 
 ◇
 

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