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[03/15 団]
プロフィール
HN:
野卯ミカ
性別:
女性
職業:
学生
趣味:
読書♪創作
自己紹介:
読むのも書くのも好きです。
【敬愛】敬称略
活字>>あさのあつこ/有川浩/京極夏彦/島本理生/西尾維新/よしもとばなな/他
漫画>>羽海野チカ/高尾滋/日高万里/他
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ぼく×友
 
 まさかの戯言二次です。
 維新さんの文章はほんとうにほんとうに大好きなので。
 好きすぎて二次は踏み出せなかったのですが。
 こないだ運転中に思い浮かんで。
 ばーっと書きました。
 
 お互いが唯一無二ってすばらしいな。
 



 ◇


 

 いーちゃん、すき。


 あどけない告白に含まれているのは、真っ白な愛なんかじゃない。
 蒼い鎖に絡められ、そこに蹲り彼女の愛に沈んだ。
 

 
 すき。 



 伸ばされる腕。
 白く細く、艶かしさなど微塵もない子どものようなやわらかなそれに包まれる。
 そのたびに思い知るのは、あの日犯した罪。
 彼女を壊したあの日を思い、彼女が望むまま傍にいた。
 罪悪感に抱かれ、眠るような日々。
 蒼い瞳に囚われ、いつか消える日がきても良いと思っていた。


 
 しかし、永遠とも思われた日々は唐突に終わりを告げた。

 

 ――いーちゃん、きらい。

 
 あの日。
 すべてを終らせたあの日、その足でぼくはマンションへ向かった。
 たくさん失って。
 たくさん捨てて。
 それでも――手放せなかった。 


 ただのエゴだ。


 生きて欲しい。
 傍にいて欲しい。
 消えないで欲しい。
 ここに。
 ぼくの、隣に。


 ……ばかみたい。


 蒼い瞳に満ちたのは、嘲笑ではなかった。
 怒りでも、憎しみでもなく。
 サヴァンである彼女が、持ち合わせているはずもないもの。
 

 

 あれから、数年が過ぎた。




 

きみがいる






「いーちゃん。おかえりなさい」

 
 
 生きながらえて、彼女は多くを失った。
 《視線の蒼》でも《青色サヴァン》でもない。
 ただの、玖渚友でしかない。
 向けられる瞳は、もうほとんど黒へと変わっている。
 

「ただいま、友」


 一度部屋へ戻り、上着や鞄を片付ける。
 それからダイニングへ戻るとお茶が入っていた。
 ずいぶんと悪戦苦闘したようだが、ジャンクフードが主食だった彼女を思えば恐るべき成長である。


「早かったんだね。潤ちゃんと一緒だから、今日は戻らないかと思ってた」


「哀川さんと一緒だと現場は早いんだ。事後処理が大変だけどね」


 ため息をついたぼくを見て、友は楽しそうに微笑んでいる。
 あれから数年経つというのに、あの人はまったく衰えということ知らない。 
 むしろまだ成長過程にあるのではないか、そんな風にさえ思ってしまう。


「まぁ、真心がいなかったからまだましか」


 橙の髪をなびかせ、髪色に負けないくらいに明るく晴れやかな笑顔が浮かんだ。
 あの親子が揃うとどうなるかわかったものじゃない。
 

「会いたかったんでしょ、ほんとは」


 見透かしたように言い、友がくすくす笑った。
 眇められた瞳に滲む蒼を見つけ、ぼくの胸がじくりと痛んだ。


「さあね」


 はぐらかして、小さな手を手に取る。
 視線が絡まり、自然とその白い頬に手が伸びた。


「ん?なあに?」


 瞳を眇めて首を傾げるあどけない表情に、再び胸が軋む。
 情けない顔を見られまいとごまかすように口付けると、べりっと音がしそうな勢いで押し返された。


「どうしたの」


 ああ、瞳に蒼が滲んで――。
 呆けているぼくの頬を掴んで、友は笑顔を消した。


「ごまかしのちゅーなんて、やめて」


 
 それでも頬に触れる手はやさしく、あたたかい。
 小さな掌。
 手に入れたもの。
 奪ったもの。
 数え切れないそれらを思い出し、残像の蒼が胸を締めつける。 


「また、難しいことを考えてるんでしょ?」


 眇められた瞳がいとしい。
 指に触れる髪も、白い頬も、小さな掌もすべて。
 彼女という存在がすべていとしい。
 だから、手放すことなんかできなかった。
 彼女がいない世界なんて、何の色もない。
 蒼も黒も、何もない。


「別に、なにも」


 なぁ、友。
 ぼくはうまく笑えているか。
 あまり得意じゃないから、不安なんだ。
 お前みたいに、上手に笑えない。


「ねぇ、いーちゃん」


 しっかりと視線を絡め合わせ、彼女は言った。


「しあわせだよ」


 瞳が眇められ、口元がきれいな弧を描いた。
 きれいに、彼女は微笑んだ。


「だって、いーちゃんがいるんだもん」


 サヴァンと言わしめた能力をほとんど失った。
 彼女はただの玖渚友へと成り下って、それでも――。
 失わないもの。
 触れ合う額、触れ合いそうな距離で、彼女はそれを知らしめる。


「昔からずっと同じだよ」


 触れ合う掌、絡む指が体温を伝える。
 あたたかい体温が、流れ込んでくる。
 ああ、彼女は――生きている。


「わたしはいーちゃん以外、何もいらなかったよ」


 ――絶対的なそれ。
 彼女の象徴にして、最大の武器を知らしめる。
 


「ねぇ、だからそんな顔やめて」


 しあわせに、なるんでしょう。


 そう、世界一きれいな笑顔で彼女は言った。


 ああ、ほんと。
 お前には敵わないよ。
 昔からぼくも変わらない。
 全然まったく、敵わない。

 
「……ああ、」


 わずかに蒼の滲む瞳を見つめて、ぼくは呟いた。
 ぼくも同じだ。
 お前がすべてだよ。
 出会ってからずっと、お前しかいらなかった。
 何度も逃げ出して、そのたびに思い知った事だ。
 さすがにもう、間違えることはないだろう。
 お前を失うくらいなら、世界なんて消えてなくなっても。
 ぼくなんか消えてなくなっても。
 全然構わなかったんだ。

 
 とても、口には出せないけれど。
 きっと全部、見透かされている。


「しあわせに、なろう」


 そう答えて。
 ぼくも精一杯、返してみる。
 お前みたいに、上手にはできないけれど。
 ぼくなりの、笑顔を返した。



 ◇

 

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