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[03/15 団]
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野卯ミカ
性別:
女性
職業:
学生
趣味:
読書♪創作
自己紹介:
読むのも書くのも好きです。
【敬愛】敬称略
活字>>あさのあつこ/有川浩/京極夏彦/島本理生/西尾維新/よしもとばなな/他
漫画>>羽海野チカ/高尾滋/日高万里/他
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『 年上の彼女は、 』 後編

 ※ 続いてます!
   前編未読の方はこちらからどうぞ → 前編
 

 あ。
 こういうのがラブコメか!←

 ◇


 嘘なんて、一度もついたことはない。
 顔に出ていなくても。
 態度に出せなくても。
 わたしは、こんなにも――




 

年 上 の 彼 女 は 、 






後 編


 彼――狐塚ユウタと付き合いだしたのはほんの1ヶ月ほど前のことだ。
「俺と付き合ってください、中條先輩」
 きっかけは、ひどく単純だった。
 ひとつ学年が下の1年生で、学校ではプレイボーイで有名だったユウタが、ある日突然ひとりで生徒会室へ乗り込んできたのだ。
 そして書記であるあたしの席の前で仁王立ちして、そんなことを言った。
「――どうして、あたしなの?」
 もう少しましな答えがあるだろうに、あたしは返事をしてしまった。
 ただ、わたしはそのとき、彼のことをよく知っていた。
 ひとつ下の学年の問題児、狐塚ユウタのことを――。
 数ヶ月前、見てしまったのだ。
 街で買い物をとき、小さな女の子が泣いていた。
 可愛らしいワンピースをアイスクリームで汚し、たったひとりで泣きじゃくっていた。
 迷子だと一目見てわかったけれど、わたしはすぐに動けなかった。
 そんなとき――。
「なんだ、お前迷子か?」
 ユウタが現れ、ためらうことなく女の子の前にしゃがみこんだ。
 女の子が頷くと、よし、と頷いて、ユウタは――。
「ほら、しっかり捕まってろよ」
 軽々と、女の子を肩車した。
 そして女の子の名前を尋ねると、大きな声で叫んだのだ。
「さつきちゃんのお母さーん、いませんかー!」
 そのとき明るく染められた彼の髪には、女の子のワンピースを汚したアイスがべったりとついていた。
 しかし彼は気にするようすもなく、しばらくそのまま呼びかけ続けた。
 ほどなくして、女の子と母親は再会することができた。
 母親は何度もユウタに謝り、彼の髪が汚れたことを気にした。
「こんなのすぐ洗えます。それよりもう手、離しちゃだめですよ」
 ユウタは明るく笑って女の子に手を振り、あっという間に去ってしまったのだ。
 気まぐれで女泣かせ――そんな悪名高い問題児の意外な一面を見てしまった。
 それ以来、わたしはユウタから目が離せなくなっていたのだ。
 告白されたときは、飛び上がるほどに驚いた。
 ただ、すぐには合意できず、数週間ごねてしまった。
 恥ずかしかったのと、からかわれているのだと思ってしまったからだ。
 本当は多分、彼よりもわたしの方が、恋に堕ちていたのに――。
 


 そして、今――。
「カナさん、ごめん」
 わたしはあのときの女の子のように、ユウタの胸で泣きじゃくっていた。
 本当に、どうかしている。
 そしてやっと落ち着いたとき、すっかり情けない気持ちになっていた。
 もっとちゃんと、伝えなくてはいけないのだ。
 すべてわかってもらえているつもりになっていた。
 ユウタは底抜けに明るくて、やさしい。
 どんなときも笑顔でわたしを受け止めて、包んでくれる。
 そんな彼に、つい甘えてしまっていた。だから、
 ――俺ばっか、好きみたいで。
 そんな風に思わせてしまった。
 何のつもりはなくても、わたしは彼を傷つけたのだ。
「ごめんね、ユウタ」
 しばらくして零れた謝罪に、彼は慌てて首を振った。
「謝らないで、俺がガキだっただけで」
 ああ、ほら――またそうやってわたしを甘やかすのだ。
「違うの」
 いつまでも、甘えていたくない。
 甘えていては、いけない。
 緊張でこくり、と喉が鳴った。
「わたしは、表情が乏しくて」
 ユウタの手に触れる。
 硬くて大きくて、あったかな手に――。
「あまり、伝わらないかもしれないけど」
「え、カナさん?」
 ユウタはぎょっとして目を見開いた。
 わたしはユウタの手を持ち上げ、自分の胸元へとあてたのだ。
「すごく好きなの、ユウタのこと」
 ほら、どきどきしているでしょう?
 問いかけると、ユウタは玩具みたいにかくかくと首を振った。
「うん、わかった!わかったから……!」
 もう降参、と言ってユウタは無理矢理にわたしをまた抱きしめた。
 そしてはぁ、と大袈裟に溜息をつくと、こう付け加えた。

「やっぱり、カナさんには敵わないよ」


 ◇ 

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